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2022.09.03

ノンクラスプデンチャーと高分子材料

ノンクラスプデンチャーと高分子材料

今月、定例の小室歯科矯正歯科近鉄あべのハルカス診療所のドクター勉強会には、株式会社T.U.Mの藤井成行CEOにお越しいただき、金属の代替材料としての、高分子材料について、勉強いたしました。

最近、マスコミでも報道されておりますが、世界的に金属の価格が、暴騰しています。それまで、歯のかぶせ、詰め物、そして入れ歯の材料等には、金属を加工して使用されていました。
金属は、今や価格が高いだけではなく、アレルギー性や、見た目の問題もあり、できるだけ違う材料、つまり代替材料を使用して治療を行う技術が、模索されています。
金属に代わる材料としては、当院が得意とする、デジタル技術を用いた、プラスチック(レジン)や、セラミック材料の使用が、非常に進歩してきています。

しかし工業界では、古くから、セラミックだけではなく、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)、あるいはスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)といった、次世代高分子材料の使用も急激に進み、製品の機械的強度や、軽量化に成功しているようです。例えば、自動車や飛行機の躯体の材料だけではなく、精密さや粘弾性が求められる、ネジ等の部品にも使用されつつあるようです。

ノンクラスプデンチャーと高分子材料

出典:https://tum-dental.co.jp/material.html

藤井社長は、20年以上、高分子材料の歯科への応用を研究し続けられ、金属のフレームやバネを使わない入れ歯(ノンクラスプデンチャー)を、臨床応用して実績を積まれ、現在、詰め物や被せ物、ブリッジにも応用できる高分子材料の開発に成功されています。

歯科に使われる高分子材料とは

これまで、歯科で使われる材料としては、プラスチック(レジン)が主流でした。主に、仮歯や、入れ歯の材料に使われています。しかし、強度が弱く、吸水性もあり、変形するので、特にかぶせ物などでは、仮歯としての一時的な使用にしか使われていません。

しかし、エンジニアリングプラスチックは、耐熱温度が100度以上で、弾力性と耐久性を兼備しているため、入れ歯などにも使えるようです。
さらに、スーパーエンジニアリングプラスチックは、耐熱温度が150度以上で、最高クラスの強度を誇り、最終の被せ物などにも、十分に使用可能な材料となっています。航空宇宙産業や、工業製品のネジや歯車などにも使われるほど、強さと精密な設計もできるようです。

しかし、セラミック材料でも同じですが、固いと言う事は、それだけ、歯に必要な、白さやや透明度がない、と言う弱点を持っています。実際、工業界で使う材料は、橙色をしていたり、灰色をしていたり、少なくともかぶせ物や詰め物として使えるものではありませんでした。そこで、藤井社長は研究を重ねられ、ようやく口にも使用可能な色合いも兼ね備えたスーパーエンジニアプラスチックを開発されました。

ノンクラスプデンチャーと高分子材料

出典:https://tum-dental.co.jp/material.html

ノンクラスプデンチャーについて

ノンクラスプデンチャーは、これまでの入れ歯にありがちな、歯に引っ掛ける金属のバネ(クラスプ)を、高分子材料で使用することにより、目立たなくする入れ歯です。

ノンクラスプデンチャーと高分子材料

ノンクラスプデンチャーの特徴

  • 金属を使用した入れ歯に比べて薄型で軽量であること
  • 保険の入れ歯に比べ、歯茎にぴったり適合して、よく噛めること
  • 見た目が美しいこと

などの特徴があります。

特にTUMデンチャーの材料であるエンジニアリングプラスチックは、これまでの材料より、強度と弾力性に優れるため、割れたりすることが少ないようです。
また、長年使われて、顎の形が変わり、適合が悪くなっても、内面に、レジンを盛り足すことができ、長きにわたって使用したり、修理をすることができることが特徴になっています。

インプラントへの応用について

インプラントへの応用について総入れ歯の患者さんなどに、入れ歯を使用して、ガタついたり、喋りにくい、といったご意見をいただくことがあります。そのような時、インプラントを、下顎であれば2本、埋入して、アタッチメントを装着して、入れ歯を固定する場合があります。これを、インプラントオーバーデンチャーと言います。

しかし時に、アタッチメントがキツすぎたり、埋入方向が平行でなければ、うまくはまらないなど、誰にでもできる方法ではありません。
TUMでは、高分子材料をそのアタッチメントに応用し、より適切な力で固定し、かつ、これまでよりインプラントの方向にバラツキがあってもセットできるよう、高分子材料の性状に工夫をしたものを開発されています。

超高齢社会が進んでいる今、少しでも入れ歯を快適に応用できるオプションを提示していただきました。

まとめ

今、歯科界のみならず、世界的規模で、脱金属の流れが加速しています。より健康志向の材料が求められること、より、安価に優れた材料を提供する必要があること、それを担保する加工技術がデジタル技術によって大きく進歩していること、を考えると、この流れは後戻りする事はないと考えられます。また、現在なお続く不幸な世界情勢にまつわる金属の供給不足を考えても、金属を使用しない診療、と言う事は、歯科医師サイドにも、患者さんサイドにとっても、必要なことだと考えています。

当院では、セラミック材料だけでなく、高分子材料にも、大いに目を向けて、より患者様に健康的で、美しく良い歯科材料を提供できるように、努力していきたいと思います。

最後に、まだ、高分子材料の歯科への応用が成功するかどうかもわからない頃から、次世代材料の開発にこだわりつずけ、TUMデンチャーとしてまずは製品開発に成功され、さらなる高みを目指される藤井社長の情熱に、感動いたしました!ご講演ありがとうございました!

 

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