5月10日、小室歯科近鉄あべのハルカス診療所の小室暁先生が理事を務める大阪口腔インプラント研究会の特別講演が、コロナウィルスの感染防止のため、WEBによって行われました。当院からは、小室暁理事長のほか、会員である2名の先生も同時に受講いたしました。
演者は、四国の松山で糖尿病専門医としてクリニックを開業されている、西田亙先生のご講演でした。西田先生は、内科医でありながら、生活習慣病と口腔衛生の関わりを強く訴えてくださる、著名な先生です。いつも、絶妙な語り口で、我々歯科医療従事者に大きな気づきを与えてくださいます。
今回の講演では、最初に、新型コロナウィルスに対する最新情報を、科学的に説明して下さいました。新型コロナウィルスは、細胞表面上のアンギオテンシン転換酵素(ACE2)を細胞に接着する受容体として使っているそうです。そして、新型コロナウィルスの場合、肺胞の表面上に、ACE2が存在するため、その部分にコロナウィルスが接着すると感染成立し重篤な肺炎となって重症化するということがわかってきています。しかし、口腔内でも唾液を出す細胞(導管上皮細胞)にも同様にACE2が存在し、その部分もから、感染成立したコロナウィルスが増殖するため、コロナの感染に関係するのではないか、と言う重要なお話をされておりました。実際、唾液を使ってコロナウィルスの抗体を検査する方法は諸外国でも始まっており、今後新型コロナウイルス予防に関し、対する歯科の役割は大きいのではないかと言うお話をされました。また、唾液腺の導管での感染を少しでも予防するために、唾液の分泌量が少なくなる高齢者、薬剤の服用者などの方には、より一層の積極的な口腔内の衛生指導が必要ではないかと言う示唆をくださいました。
このような、口腔清掃がコロナウイルス感染に関係するという知見は、他にもあります。
新型コロナウイルスに感染すると、肺の免疫力が低下することがわかっています。鶴見大学歯学部 花田信弘教授によりますと、その状態で口の細菌が肺に入ると、ウイルスによる肺炎とは別に、細菌による肺炎を起こします。ですので、日頃からお口の中の清潔を保つことが重要です。花田先生は、通常の口腔ケアーの他に「舌みがき」の必要性も訴えておられます。舌の表面にも、非常にたくさんの細菌が住み着いているからです。
このように、お口の清掃が、通常の肺炎予防だけでなく、コロナウィルスによる肺炎の重症化の予防としても重要であるということがわかってきています。日本では、現在なおコロナウィルスの感染は完全に収束しておらず、これまで行なっていた歯科医院による定期的な口腔内の清掃を、ついつい延期してしまう患者さんが多いことも事実です。しかし、これが長期化すると、患者さんの歯周病の状態や、歯の欠損の状態によっては、歯科医院に来院するリスクよりも、定期ケアをおろそかにすることのリスクの方が大きいケースも多数存在します。ですので、患者さんにおかれましては、ご自身で延期の判断をされず、ぜひともかかりつけの先生に判断を仰いでほしいと思っております。