こんにちは。理事長の小室暁です。
先日、私が副施設長をさせていただいている、大阪口腔インプラント研究会の例会が開かれました。
今回は、岡山大学学術研究院 医歯薬学域 インプラント再生補綴学分野 教授、窪木拓男先生にお越しいただき、”ライフステージに合わせた口腔インプラント治療の考え方”について、お話しいただきました。
日本は、言うまでもなく、超高齢化社会に突入しており、我々が行う口腔インプラント治療も、その場での治療の成功のみならず、人生の長期にわたって患者に満足を与えるものでなければならなくなってきています。当院の目指す、インプラント治療の考え方に非常に近く、学びも多いご講演でしたので、シェアしたいとおもいます。
今回の御講演では、患者のライフステージを介護予防・虚弱予防・認知症予防期、要介護・要支援(前期)、要介護・要支援(後期)の3つに分け、それぞれのステージでのインプラント、補綴治療(歯にかぶせ物を入れたり、歯のないところに入れ歯などを入れて、噛めるようにすること)のあり方と目標について詳しく述べていただきました。
介護予防・虚弱予防・認知症予防期
要介護・要支援になる前の時期では、補綴歯科治療の目標は、口腔関連QOLの向上はもとより、介護予防、フレイル予防、認知症予防となります。つまり、これまで我々が外来治療で行ってきた”よく噛めるようにする”治療となります。インプラント治療をすることで、多様な植物や栄養素を摂取出来るようにすると言うことに重点が置かれることとなります。
これは、これまで我々が外来で取り組んでいるインプラント治療となります。もちろん、インプラントをより良い状態にキープするために、衛生士さんによるメンテナンスは欠かせないと考えています。
そのためには、インプラント、矯正、予防など、専門家のこの力を伸ばし、より専門的な治療を当院の中で組み合わせて実現できるように技術を磨く必要があると思いました。
要支援要介護期
一方、要支援要介護者においては、欠損の修復処置に加え、口腔機能訓練としての摂食嚥下リハビリテーション、つまり、食べたり飲み込んだりするための筋肉などの訓練、が重要な意味を持つこととなります。この局面での補綴、インプラント治療のあり方については、日々の外来診療においては、気づかない観点も多く、非常に学びとなりました。
ライフステージの変化、つまり外来に来れなくなった時に備えて、インプラント治療においても、いざとなれば、入れ歯に変更したり、かぶせを外したり出来るように、あらかじめインプラントの上の補綴物(かぶせ物の部分)を作成しておく事は、当院では患者さんとよくお話し合いをしたうえで、行っております。しかし、患者さんと話し合い、最善と思う設計変更を家族や経済的な理由から必ずしも受け入れていただけるケースばかりではないと言う事は新たな気づきとなりました。確かに、そういう経験を我々も時にするのです。また、本人や家族の死生観にまで踏み込み、治療に対する意思確認が必要だと言うことを、窪木先生はおっしゃいました。まだ我々は、患者の死生観にまで寄り添うことにまだ慣れてはおりません。ですが、衛生士やトリートメントコーディネーター(TC)なども含め患者さんのみならず、家族様とも意思確認をしていくことの重要性を再確認しました。
今後、ますます、患者さんや取り巻く人々とカウンセリングを尽くす医療が必要ということです。当院では、医院ぐるみで、カウンセリングを強化してきました。コロナ下では、オンラインカウンセリングにも取り組み始めております。患者さんと寄り添い、その結果としての治療プランを実現する治療技術を磨く治療姿勢に、今後とも、磨きをかけてまいりたいと思います。
また、せっかくの治療物が形をかえど、喜んでいただけるよう、精進してまいります!