皆様、こんにちは。理事長の小室暁です。
2022年も、あとわずかとなって参りました。非常に慌ただしい毎日を過ごされつつ、来年に思いを馳せておられることと思います。
さて、少し早いですが、本日は、来年の干支のお話をさせていただきたいと思います。来年の干支は、うさぎ、ですね。実は、私は、うさぎには大変思い入れがあるのです。その理由は、私が卯年である、と言うわけではなく、大学院時代、非常にうさぎにはお世話になったからです。
私は、大阪大学歯学部を卒業後、大学院に進学し、”咀嚼運動の中枢神経での調節機構”、と言う一見難しく聞こえる研究をしておりました。簡単に申し上げますと、人が食べ物を食べるときに、どのようにして食べ物の大きさや、柔らかさに応じて、噛み方や、噛む力を調節しているのか、と言うことを研究していました。
人は、ものを食べる時、呼吸や、心臓の鼓動と同じく、基本的に一定のリズムをきざみ、顎を動かすように脳でコントロールされています。しかし、運動している時や、酸素が少ない時に、呼吸や、心臓の鼓動が速くなったり遅くなったりするのと同じように、物を食べる運動も、無意識のうちに、食べ物の硬さや大きさなどにより自然と上手に調整をしています。例えば、硬いものや大きいものを食べるときには強く、小さいものや柔らかいものは弱く噛むといった具合です。しかし、どのように、脳で調整されているかは、意外と、いまだにわからないことも多く、私はうさぎを使って、研究をしていました。ウサギは、人間と同じように、食物を噛み砕く、つまり下あごを横に動かす運動を一定のリズムで行うことが得意なので、非常に研究にはマッチしていたのです。私は、顎の動きの運動の中でも、特に、フィードフォワードメカニズム(予測して運動を行うこと)について研究をしていました。つまり、口に入って初めて、食物の物性に応じて顎の動きを変えるのではなく、動物はあらかじめ、口に入れる前から、その食べ物の硬さや大きさを予測し、顎の動きを変えていると言うことを証明しました。
最初は、ウサギの扱い方さえわからなかったのですが、実験を始めて、1年2年経つうちに、非常に愛着が湧いてきたことを思い出します。生物ですので、餌をあげるために、年末年始も、大学に通っていた年もありました…。今では懐かしい思い出となってしまいました。
ですので、私はうさぎと言うと、どうしても卒業当時の思い出が頭によぎってしまいます。初心に帰る、と言うほど大層なものではないかもしれませんが、来年は卯年。初心に帰り、いろいろなことを、丁寧に積み重ねていく気持ちを思い出していきたいと思っております。
私は、現在臨床医をメインに活動しておりますので、直接的に、当時の研究が私の臨床に関わる事は少ないです。しかし、当時の研究を通しての論理的なものの考え方、論文の書き方、学会活動の作法等は、現在私が臨床家として、あるいは学会活動をさせていただくにあたって血となり肉となっています。また、当時お世話になった先生方や先輩方も、いまだに歯科界で活躍されており、その頃の人脈は何事にも変えがたいものだと思っております。来年は期せずして、大学院時代の同僚の先生方ともお会いする機会が増えそうです。改めて、私の原点に立ち返り、より良い1年にしようと決意しております。
私の研究業績、学会発表などは、こちらに掲載しております。もしよろしければ、ご覧ください。
写真は、私の大学院時代にお世話になっていたウサギ、ではなく、私の息子が小学生の時、動物係としてお世話していた、うさぎです。笑